その日は、良い天気だった。
気分が良かったわたしは、一張羅として買ったアウターをおろして都内に一人で買い物に行った。
一張羅は、自分にとってはめちゃくちゃ高かったけど、着心地もシルエットも良くて、買って良かったな〜と思った。
帰り
夕方頃、帰ろうと電車に乗ると満員だった。
手も上にあげられないほどの超満員で、ポケットからスマホを出すこともできなかった。
満員電車に苦しんでいると、外国人の親子が乗ってきた。
お母さんが幼い赤ちゃんを抱っこしていて、赤ちゃんの顔がちょうどわたしの目の前にきた。
スマホもいじれないので、赤ちゃんの様子を見て癒されていると、最悪な社内環境のせいか、赤ちゃんがグズりだしてしまった。
大人のわたしだって泣きたいこの環境。
赤ちゃんが本当にかわいそうだった。
お母さんもすごく困っていたけど、満員で手も上にあげられないわたしには何もできなかった。
お母さんがわたしに向かって、
申し訳なさそうにアイコンタクトしてきたので、
「OK、OK!気にしないで!」とアイコンタクトした。
伝わったかはわからない。
赤ちゃんに向かって、ちょっと変顔とかしてみたけど、全然こっちを見ていなかった。
わたしには何もできない。
ので、寝た。
満員なのをいいことに、人に寄りかかって、寝た。
目覚め
どれくらい寝てただろう。
ふと目が覚めた。
あの親子はどうしたかな、と思って顔をあげるとまだ目の前にいた。
ちょっと前まで泣いていた赤ちゃんが、ニコニコしていてかわいかった。
何かを美味しそうに食べていたので
おやつをもらってご機嫌になったんだな〜
良かったね〜!と思って口元を見ると
見覚えのあるもの…
赤ちゃんがもぐもぐしていたもの。
それは、その日おろしたばかりの
わたしの一張羅だった。
つづく